雑感

ビリングシステム 見込業績と思惑の狭間でどこまで株価上昇するか?

ビリングシステム 見込業績と思惑の狭間でどこまで株価上昇するか?

国民年金の納付受託者に選ばれて以降、堅調に株価上昇を続ける3623 ビリングシステムですが、先日のモーニングスターの記事で更に値を上げ堅調に推移しております。

 同社IR(投資家向け広報)によれば、国民年金の納付業務受託を受けて、ファンド(機関投資家)の問い合わせやミーティングの申し込みが数件来ているという。時価総額100億円以下の会社では、あまりみられない現象だ。

ヤフーファイナンス・モーニングスター記事

記事を一部抜粋すると、時価総額100億円以下ながら、ファンドなど機関投資家からも注目されていることが株価急上昇の要因なようです。

一般的に機関投資家が入ってくる時価総額サイズとして、ちまたでは「少なくとも300億円前後」と言われることがありますが、記事内容を100歩譲って信じるとするならば、時価総額100億円以下で注目されるということは「将来的に時価総額300億円を超えて成長する可能性がある(やや拡大解釈しすぎかもしれませんが)」と受け止めても良いのかもしれません。

注目されているのは「PayBアプリの伸びしろ」ですが「そんなアプリ使ったことないよ」という方がほとんどだと思います。

PayPayあるし、他にも楽天ペイに、auPayなど数多くのペイメントアプリがあるなかで、どこに商機があるのか分からない人がほとんどだと思いますし、私も最初は疑問に思いました。

しかし調べれば調べるほどに他社との違いも分かってきて、外部要因(特に税金面)による成長可能性も見えてきたため、この日までホールドするに至っています。

前置きが長くなりましたが、PayBの伸びしろについて書いていきたいと思います。

アプリ決済における納付受託者に選ばれるという事

PayBアプリの伸びしろは、支払い可能な銀行が増えれば増えるほど、そして支払可能な請求書及び税公金が増えるほどに、利便性が増し、決済件数が増える、というところにあります。

現在では14,257社の請求書・納付書にてPayBが利用可能です。

そこに10月20日のリリース「国民年金保険料のスマートフォン決済サービスによる納付業務の受託について」で、さらなる新しい発見、変化がありました。

アプリ決済の納付受託者に「単独で」選ばれるという事

2022年11月に施行された「情報通信技術を利用する方法による国の歳入等の納付に関する法律(キャッシュレス法)」により国及び地方行政は、積極的にデジタル決済(クレジットカード、電子マネー、二次元コード(QR等))を推進することとなりました。

デジタル決済で国が税金の納付を国民等から受け取る際には「指定納付受託者」に税金の納付を委託して納付する方法(クレジットカード、電子マネー、コンビニ決済等)により税金の納付を行わせることができる、としています。

情報通信技術を利用する方法による国の歳入等の納付に関する法律案

デジタル庁サイトを見た限りでは指定納付受託者の数に制限があるようには見えませんが、今回の国民年金の納付業務(アプリ決済)においてはビリングシステムのみが選ばれました。

ビリングシステム社のIRをみても「スマートフォンでのクレジットカード等決済代行アプリを利用した国民年金保険料の納付受託業務に係る委託業務 一式」「第三者型前払式支払手段による国民年金保険料の納付受託業務に係る委託業務 一式」とあるように、国民年金側では「少なくとも2社の納付受託者を選ぶ予定だった」とも読み解けます。

この点に注目すると「なぜ同社が2つの入札案件を獲得できたのか」という疑問も出てきます。

ペイメント系のアプリ(第三者型前払支払手段)なんてたくさんあるし、国側は選ばれたい事業者を募って、適切な手続きを取ってすべてを「指定納付受託者」としてもいい気がしまよね。

行政側からの視点

行政側からすると、各ペイメント系会社、クレカ会社それぞれを納付受託者としても良いと思われますが、行政側にて各社と契約すること自体が非常に手間となると推定できます。

一方、PayBアプリは取扱銀行だと即時決済が可能で、クレジットカードも5社とも連携済みです。

また、今回のリリースで分かったのは「APIを用いることで第三者型前払式支払手段アプリ(PayPayなど)とも連携できる」ことが分かりました。

これにより、PayB及びPayB-APIを利用することで

  1. 提携銀行口座から即時に引落しできる
  2. API接続で銀行アプリからも引落し可能
  3. クレジットカードで支払いができる
  4. API接続でPayPayなどでも払える

銀行口座、クレジットカード、各社Pay系アプリ決済、いずれの決済方法でも対応できるというのは、国側からすると納付受託者として選びやすい側面があります。

消費者側の視点に立ったときにも、国が特定の決済方法に誘導することがない、というのも選びやすい要因になっているように思います。

当たり前ですが基本的にどの会社も自社誘導型で他社の決済にAPIなどを用いて誘導する仕組みは持っていません。

納付受託者となった際の収益力はいかほど

国民年金の納付受託者の場合、どのアプリ決済でもビリングシステムが納付受託者となるため、他社アプリ決済でもデータ連携により様々な情報を管理することになります。

ここからは推定ですが、納付受託者として決済手数料(トランザクションフィー)とは別に納付受託者としての事務手数料を1円~5円程度、収益とするのではないでしょうか。

国民年金は年間1,500万件の決済があると言われており、そのうちの30%がキャッシュレス化したとして年間450万件は少なくとも流入してくると想定できます。

仮に@3円とした場合、年間1,350万円の売上≒粗利となります。

予想としては少々物足りませんよね。これはあくまできっかけです。

PayBの決済手数料はいかほど

では450万件のうち、クレジットカード決済と提携銀行の決済については、PayBアプリを介することになるため、PayB自体で決済手数料を取るものと思います。

令和2年2月に大分県から公金収納事務についてという報告書があるのをネットで拾いました。

そこにはPayBアプリの決済手数料が55.6円とあります。

この手数料55.6円を払い出された提携銀行と分けているはずです。

では、取り分は?というと、想定ですが今年度から収益認識基準の改正により、売上の処理の方法が変わりました。

これまではトランザクション売上も一緒に計上していましたが、2022年からは売上に含めず処理することとなっています。

改正前では4.23億円+3.57億円=7.8億円の売上想定でしたが、今期から4.23億円のみを計上する計算です。つまり、4.23億÷7.8億×100=54.6%の粗利だったということが予想されます。

55.6円×54.6%≒30円

PayBの1件当たりの手数料(売上粗利)は30円ということが分かりました。

あくまで大分県の場合のみかもしれませんが、ここは概ね1件当たり30円でPayBは処理決済しているという建付けで話を進めます。

450万件想定のうち何件がPayBを介すか

ここが難しいところですが、今回銀行口座払いだけでなく、クレジットカード決済にも対応しています。

仮に150万件が銀行口座、クレジットで支払われた場合、30円×150万件=4,500万円となり、納付受託者の手数料と併せて、ざっくり年間6,000万円の売上粗利上昇になるのではないか、と想像できます。

手数料単価、決済処理数、納付受託単価など、かなり変数が多いため、想定している単価及び決済件数が少しずれるだけ売上粗利は大きく変わるので、うのみにはしないで下さい。

「合せて6,000万円の収益向上じゃ少ないな~」と思う投資家も多いと思いますがファンドはどこを見ているのでしょうか。

 同社IR(投資家向け広報)によれば、国民年金の納付業務受託を受けて、ファンド(機関投資家)の問い合わせやミーティングの申し込みが数件来ているという。時価総額100億円以下の会社では、あまりみられない現象だ。

ヤフーファイナンス・モーニングスター記事

あえて再掲載しますが、ファンドが見ている先は「地方税統一QR決済」にあると思われます。

地方税統一QR決済も納付受託者を選ぶことになっている

地方税統一QR化に当たり、関わりを持つ団体として地方税共同機構があります。

11月15日にリリースされた情報によると、地方税統一QRコード決済を推進するにあたり、納付受託者を選ぶことが示されていました。

令和4年度(2022年度)地方税における電子化の推進に関する検討会とりまとめ

PDF本文

27ページ上部
27ページ上部抜粋

2023年3月に機構指定納付受託者として機構が指定する予定と書かれています。

しかも「クレジットカード対応」と「スマホアプリ等API利用対応」と。

APIを活用した納付受託システムはPayBアプリが国民年金で受託実績があり、状況もかなり似ていますよね。

国税ではGMOPGが納付受託者として選ばれましたが、あれは専用サイトを使ったブラウザでの決済処理になります。GMOPGが展開しているのは銀行向けの銀行Payであり、アプリ決済のクレジットカードの導線はないように思います。

地方税は銀行窓口とコンビニ払いで2.2億件の決済処理

地方税はコンビニと銀行窓口払いで約2.2億件の決済件数があると言われており、今回の地方税統一QRの流れは、これらの人件費コストのかかる窓口払いの収納代行を減らす目的も備わっています。

仮に国民年金のように、銀行、クレジット、ペイ系アプリをAPI含めて接続し納付受託者となれた場合、どのくらいの収益インパクトがあるでしょうか。キャッシュレス決済が30%として、

2.2億件×30%=6,600万件となります。

@3円の受託とすると、年間約2億の売上粗利の向上です。

ビリングシステムは概ね毎年黒字を維持しており、決済処理数の増加でサーバー費用などは増えたとしても、人件費はさほど増えるような事業には見えません。

さきほどの国民年金の納付受託と比べるとかなりのインパクトがあるように思います。

PayBを介した決済数はどのくらいになるか

納付受託だけで2億の売上粗利インパクトがありそうだ、と予測しましたが、実際にPayBアプリを介した決済も増加するのは間違いありません。

仮に6,600万件のうち、クレカ決済も加わることで1,000万件がPayBアプリで決済されるとした場合、

30円×1,000万件=3億円の売上粗利上昇となり、納付受託処理の売上粗利予想2億と足すと年間5億の売上粗利増となります。

すでにビリングシステム社自体が黒字化しているので、人件費が大幅に増えなければ、営業利益に直結してきます。

来年度からスタートし、どこまで浸透するかで、数値自体も変わってきますが、少なくとも納付書にQRコードが付くことによって「キャッシュレス決済ができる」ことは広まるので、キャッシュレス比率30%~は時間の問題に思われます。

ファンドが注目しているのは、地方税に関しても国民年金同様に納付受託者に選ばれ、同社アプリでクレジットカード決済ができること、にあるではないでしょうか。

ポイントは2023年3月の納付受託者選定

さきほどの図にも記載がありましたが、2023年4月からの地方税統一QR化にあたり納付受託者は2023年3月に選ばれる予定と書かれています。

仮に納付受託者に選ばれなくとも納付書にQRが付くことで認知度は高まり決済処理数は増えると思われますが、数字のインパクトでは納付受託者に選ばれるのと選ばれないのでは大きく異なります。

先ほど売上粗利で5億と書きましたが、国民年金と合わせると5.6億ほどのインパクト予想となります(少ないか多いかは自分で判断してね)

今期の営業利益が約4億着地として、来期以降は一気に9.6億、あわよくば営利10億乗ってしまうかもしれないと思うと、ファンドだって先行して買いに来るのも頷けます。

2023年4月の地方税統一QR化をにらみ(納付受託者に選ばれる可能性とクレカ決済対応は考えていませんでしたが)、毎月コツコツ買ってきましたが、ここにきて注目され、少しホッとしています。

最後にこの予想も

  1. 納付受託者に選ばれること
  2. 地方税でもクレジットカード決済をPayBアプリにて行える

ことが大前提になっており、②が崩れると利益10億は難しいと思っておいてください。決済件数がそんなに増えないと思います。

また単価設定についても、それなりにエビデンスは拾ってますが、あくまで拾った情報の中からの独自予想なので、そのまま額面で受け止めないようにしてください。

営利10億だと時価総額はいくらになるか

営利10億の場合、純利益は約6.5億円程度でしょうか。発行株数は656万株程度のためEPSで99円となります。

PER30倍で約200億円の株価2970円。

GMOPGが決済大手でPER75倍ほどあるため、それに合わせると時価総額487億円で株価7,425円ということになります。。

ちなみにその子会社GMOFGはPER115倍で、、、

だんだん夢物語になってくるので止めますが、税金系は毎年角度の高い収益となるため、本格的に収益向上が見られるとPERは高い評価となるのではないでしょうか。

本日時点で株価は1,642円の時価総額108億円です。

夢がありますね。

私は地方税統一QRも始まってませんので、もちろんガッチリホールド継続です。

ABOUT ME
投資くん
2021年10月の初期投資300万円。11月より毎月30万円を入金し、1,000万円になったところでストップ。グロース株中心に中長期投資を行いキャピタルゲインを狙います。