昨年度から固定資産税などの納付書にQRコードがつき、楽天PayやPayPayでの支払いが可能になり、税金の納付チャネルが拡大しました。
その市場規模は大きく、銀行窓口払い、コンビニ払いで合計2.2億件の決済数があり、このパイをどの決済サービス会社が取っていくのか、というのが地方税QR決済テーマになっています。
電子納付の国が負担する手数料は33円税別?
電子マネーなどで地方税を収める場合、国は収納手数料として33円を支払うことになっています。
これは電子決済ペイジーの手数料に準拠しているようです。
(公的資料ではないため「?」をつけています。)
楽天ペイは楽天カードチャージで0.5%還元
20万円の固定資産税を楽天ペイで支払うケースを見てみます。
まず20万円を楽天カードで楽天ペイにチャージすると0.5%の還元で1,000ptが消費者に付与されます。楽天側から見ると1,000円の支出です。
そのチャージした資金で固定資産税をQRで支払うと、楽天側は33円の収納代行手数料を国から得ることができます。
つまり、楽天側は33円を国から受け取って、消費者に1,000円の還元を行っている状態となり、少なくとも差額967円の逆ザヤとなります。
これが決済数100万件になると約10億の損失です。固定資産税をなるべくお得に済ませたい人は1000pt還元のある楽天ペイを使うかもしれませんが、ただでさえ楽天モバイルで大赤字なのに、いつまでこの状態が続くかは不透明です。
しかし、楽天ペイ側も、チャージされた金額が何に使われるか分からないため、地方税支払いのときだけ楽天カードでチャージされた0.5%還元を止めるということができません。現在のシステムでは還元せざるを得ません。
PayPayでも地方税QRは支払えますが、この楽天ペイのような逆ザヤを嫌ってか、QRで地方税を支払う場合はPayPayクレジット(還元ゼロ)でしか払えないようになっています。
ポイント還元はゼロになるようですが、20万円の固定資産税に対して収納代行手数料33円の受け取りでは国際ブランドへの手数料、ネットワーク利用料なども加味するとたいした利益はなく、むしろ損失ではないでしょうか。
※ブランドフィーは0.05%(20万円だと100円)、ネットワーク利用料は6.0円/件といわれています。
PayBで地方税をクレカ払いすると
ビリングシステムのPayBでクレジットカード払いをする場合、システム利用料として下記の手数料が納付者の負担となります。
20万円の固定資産税を支払う場合、納付者は別途1,716円税込(1,560円税別)の費用が発生します。
このシステム利用料の大部分はクレジットカード会社に支払う決済手数料で、手数料率にして0.85%。税公金の支払いの場合は公共性の観点でかなり低い料率に抑えられているのかもしれません。
PayBにてクレカ決済してもらえると利益爆増?
今回のブログの本質的なテーマです。
先般ビリングシステムのIRに、このシステム手数料の中にも収益があることをIRに確認しました。
利益率は不明ですが、仮に利益率10%とすると税別1,560円に対して、156円がビリング社の収益です(※私の勝手な予測値です)
また、売上はクレジットカード会社への支払手数料原価を差し引いた差額のみを売上計上するらしく、会社全体としての見栄えの問題ですが、粗利率は痛まない(下がらない)ような計上方法になり、むしろ取扱件数が増えると粗利率が増える構造のように思います。
※つまり1,560円をシステム利用料として受け取っても、額面は売上計上せず収益部分のX円しか売上計上しない方法ということ。
また、これに加え、国からの収納代行手数料@33円も受け取れるため、固定資産税20万円をPayBにてクレジットカードで支払う場合、33円+156円(仮)=189円の収益となります。システム利用料の取り分が5%としても合計111円です。
これまでは決済額にかかわらず、収益構造が1件当たりX円という仕組みでしたが、クレジットカード決済の場合、システム利用料は決済額に応じて単価が増加する構造であれば、PayBの売上粗利も以前に増して、増加していく見込みがあります。
実際のところ「33円+X(システム利用料の一部)」で、どのぐらいが取り分になるのか?というのは楽しみでもあるところです。
ちなみにPayB提携の「銀行支払いの場合」は収納代行手数料33円を提携銀行と分けるような形になっているため取り分は33円のうち20円そこらになりますが、クレカ支払の場合は別でシステム利用料を受け取るため分ける必要がないのもポイントです(これも売上は支払手数料原価を引いた売上計上、根拠は収益認識に関する会計基準による)。
これもIRに銀行口座引き落としとクレジットカードの原価構造の違いについて質問し確認済みです。
ビリング社としても、クレカ決済のほうが売上利益が伸びるため、メジャーなクレジットカード会社とはどんどん提携を進めてほしいところです。
収納代行手数料は改善される可能性はあるか
現在のところ、指定納付受託者制度を利用した納付の場合、クレジットカード決済のみがシステム利用料を納付者が別途支払う仕組みになっています。
じゃあ楽天ペイなどの電子マネーでもシステム利用料を取るような仕組みになるのかについては、私もわかりません。ただ言えるのは、クレジットカードから楽天ペイにチャージする際のポイント還元はあくまで事業者が勝手にやっていることなので、それに応じた収納代行手数料になることはないうことです。
また、国が負担する収納代行手数料33円が今後増えるかについてもわかりません。
コンビニ払いでの場合、納付書の保管義務など面倒な手間があるため、33円より多い手数料を国が手数料として払っているようですが、PayBのような電子決済となると、そうした保管コストがないため、コスト構造の観点からコンビニ払いの場合の収納代行手数料より多くなることはなく、収納代行手数料の増額もさほどは見込めそうにありません。
クレカ決済数を増やすしかない
結局のところ収益向上のためには、決済数、特にクレジットカードによる決済数を増やすしかありません。
地方税は主に第2Q(4~6月)に集中するのですが、昨年度は地方税統一QR決済が始まり、それこそPayPayや楽天ペイで支払えるようになったことから、PayBは苦戦を強いられました。
預り金推移をみると、昨対比で減少している結果が出ています(オレンジ色)。
ただ、第3~4Qの預り金額を見ると堅調に伸びているので、伸び悩みは地方税QR決済のみにあると考えられます。
消費者もバカではないので、そりゃポイント還元のある楽天ペイなどで支払う人が多かったものとみられますが、PayPayや楽天ペイなど事業者側は先ほどの説明のようにい逆ザヤである可能性が高いため、何かしらの対策が練られる日は近いような気もします。
もしかしたらPayPayカードや楽天カードと、PayBが提携し、システム利用料を受け取れるような収益構造改善の可能性もあるかもしれませんね。
ちなみに国民年金については、ビリングシステムがPayBの仕組みを活用した収納代行事業者となり、楽天ペイでもPayPayでも支払えるようになっています(国民年金は納付率が70%台と低く国が手数料を払ってでも集めたい状態です)
2021年10月の初期投資300万円。11月より毎月30万円を入金し、1,000万円になったところでストップ。グロース株中心に中長期投資を行いキャピタルゲインを狙います。